大峰 稲村ケ岳 1726m
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この山は初めてという山友Nさんを、五月晴れの稲村ヶ岳に案内した。
私自身も、この山にいつも訪れるのは山野草の花が終了した10〜11月の紅葉シーズンで、この時期は始めて、晩春にどんな花が見られるか楽しみである。加えて、この上天気に遠足気分である。
母公堂から杉林の緩い登り道は適当に木漏れ日があり、フタバアオイ、ツクバネソウ、ムロウテンナンショウ、ルイヨウボタン等数々の野草が見られた。Nさんは中でもルイヨウボタンは始めてとお気に入り。
フタバアオイ ウマノスズクサ科 | ルイヨウボタン メギ科 | |
ハシリドコロ ナス科 | ウスゲクロモジ クスノキ科 | |
しばらく登り、沢には花の終わったタチネコノメソウがあり、やがて杉林に群をなすのはカシワバアジサイかなと思いきや後で調べると南近畿に生育するヤハズアジサイだった。
トチバニンジン ウコギ科 | タチネコノメソウ ユキノシタ科 | |
ヤハズアジサイ ユキノシタ科 | マルバコンロンソウ アブラン科 | |
予定の1時間ほどで観音峰からの合流点の法力峠に到着した。谷から吹き上げる冷たい風を避け、少し先で休憩した。Nさんは若葉の茂る山の上方で赤いシャクナゲの開花を見つけた。下を向いていると誰も気づかない距離。
ここからは緩やかな登りで、オオカメノキ、ヤマツツジ、コバノミツバツツジによく似たツツジが多くなる。ガレ場であまりにも小さくヒメイチゲと間違いそうなワチガイソウが見つかる。Nさんとワチガイソウとマチガイソウとこの可愛い花の名を呼ぶ。
ワチガイソウ ナデシコ科 | ツクバネソウ ユリ科 | |
イワセントウソウ セリ科 | イワセントウソウ セリ科 | |
ニッコウネコノメソウ ユキノシタ科 | エンレイソウ ユリ科 | |
上に行くにつれ大日山の異様な岩峰が目につき始めた。やっと木々の芽吹きが始まったところで林床は草もない。70分ほどで山上辻の鞍部に到着し昼食休憩。稲村小屋は閉まって有料トイレも閉められたまま。ここでも新芽と花が同時に展開し始めたオオカメノキや紅色のツツジが開花。
ムシカリ スイカズラ科 | 大日山 | |
アケボノツツジ?ツツジ科 | ヤマツツジ ツツジ科 | |
稲村小屋 山上辻にて | フジシダ イシカグマ科 紀伊半島特有 |
山上辻の鞍部は寒々として、やっと春が訪れたところ。初めて見るコミヤマカタバミやヒメイチゲに心も浮き浮きしながら心の中で「始めまして」とシャッターを押す。かがみ込んでよく見ると痩せたハルトラノオがまだ寒さに震えていた。
このスミレは?スミレ科 | このスゲは? | ||
ハルトラノオ タデ科 |
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ヒメイチゲ キンポウゲ科 |
マムシグサ | ||
コミヤマカタバミ カタバミ科 | コミヤマカタバミ 中央の黄色い班が特徴 | ||
大日のキレットには残雪、ガケを見上げて驚きの声をあげた。この間、舟伏山で見てきたNさんは直ぐ にイワザクラと呼び、思いがけない花との出会いに大喜びの握手。岐阜県と紀伊半島と四国、九州に産するイワザクラの満開のお出迎えに夢中でシャッターを押す。ここでは特にオオミネコザクラと呼ぶそうだ。
オオミネコザクラ サクラソウ科 | ||||||
絶壁に咲くオオミネコザクラ | ||||||
大日山は後にして稲村ヶ岳への険しい道を登る。群生のシャクナゲのつぼみはまだまだ固く開花まで10日はかかるだろう。稲村ケ岳の3等3角点にタッチし、展望台に登る。快晴の展望台からは東に大普賢岳、大台ケ原、南に弥山、北東に山上ヶ岳が見渡せる。はるか彼方に金剛山、山頂が薄赤い大和葛城山。双眼鏡で覗くとツツジの大和葛城山だった。
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大普賢岳方面 稲村ケ岳から | ||||
大日山 | 弥山・釈迦方面 稲村ケ岳から | ||||
稲村ケ岳を後に大日へ。大日のキレットの岩場に咲く紫色のツツジはアケボノツツジだろうか。 カメラマンなら絶好の場所だろうが。大日山の険しい登りをこなし、大日菩薩を祭る山上に立つ。祭壇にはゴマギやお札が供えられて修行僧の姿が思い出される。山頂のガケ近くにマンサクの残り花、隣にはコヨウラクツツジが咲き始めていた。 帰りは来た道を花を楽しみながら引き返した。 |
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大日の深い谷 | ||
コヨウラクツツジ ツツジ科 | 大日山山頂 |
かくして無事に稲村ヶ岳の案内は終了した。シャクナゲやイワカガミはまだまだ蕾が固く残念だったが、初めての野草にたくさん会えて満足した。オオミネコザクラを筆頭にコミヤマカタバミ、ヒメイチゲ、ワチガイソウ、アケボノツツジ等。今春、北近畿の山に数回訪れたがこちらとはまた違った植生を見ることが出来た。紀伊半島、四国、九州に産するフジシバ、イワザクラ、ヤハズアジサイ等も。少ない時間だったが、相棒も、山登りの場としても、花巡りの場としても堪能されたことと思う。